石の都にみちびかれ。

 

 

石灰岩まみれのこの土地に,イスラム勢力から修道士たちが逃げ込んだのが13世紀。

その遥か昔から、痩せ細ったこの土地で作物を作り続ける貧乏百姓。

彼らの共通点と言えば、乳幼児の3人に1人がその劣悪な環境を生き抜けないこと。

 

ここは地獄の一丁目。

 

イタリア貧困の象徴とまで言われたその土地には、全てが石灰岩で作られた、

住居と呼ぶにはあまりにも厳しい「サッシ」という洞窟居住都市が存在した。

 

 

猫だ。

 

こちらをうかがっているのか。

 

 

穏やかな人が多い町には猫が多い。猫は町の治安のバロメーターだ。

 

と、これはあくまで我々の経験則だが、​ここはきっと良い町に違いない。

 

 

 

サッシの中は、昔のままに思える石の迷宮都市が広がっていた。

 

しかし、そのほとんどがカフェやゲストハウス、はたまたレストランへと様変わりしている。

 

 

監獄時代の面影は、まるで嘘だったかの様に曇天に霧散した

​現在、人々は歩いて15分ほどの新市街に移っている。

そこそこ大きなビルが建ち、病院や駅が建設され、整備された綺麗な場所だ。

 

金のない我々は、ナポリからバスでこの新市街にまず辿り着いたのだが、

ナポリからのバス停は新市街の端っこにあるおかげで、この中心部まで来るのに

かなりの距離を歩いたことをふと思い出した。

 

 

 

夜も更けるにつれ気温がグッと下がってくる。この日の夜は-4℃くらいだった。

​路上にはマンドリン弾きが現れ、三輪車の子供は母親と新市街の家へと帰って行く。

ぽろんと物悲しい音色が寒空に響いた。

​何も無かったはずだ、この町は。

それなのに、今ではクラフトビール屋、美味しい地元の食材を使ったレストランなどが観光客の懐を狙っている。地元の顔役達も訪れるようだが、少し飲んだらすぐに店を出ていってしまた。きっと彼らの馴染みの場所、80年代のハードロックが掛かる場末のパブへこれから足を運ぶのだ。​我々もお気にいりの店を見つけたが内緒なのでここでは書かない。

​猫のいる町が穏やかなのは昼の話。夜のマテーラは暗い。

灯りが少ないだけじゃない。雰囲気が助長する暗さがあるようだ。

駅前広場の若者は店へは入らずに友人たちとタムロしている。

程よく破壊された水飲み場からは水が噴き出している。

景気が良さそうなのは町の一部だけ。どこもそう。

噴き出す水は止まらない。

新市街へ移動した後も、ここで暮らす人々の時間の流れはあまり変わらないように思う。

ゆっくりとしている。そして静けさが充満している。

 

​13世紀も21世紀も、酸いも甘いも内包したこの町は寒いが居心地が良い。

 

 

「石の都マテーラ」

 

今この景色はどんなふうに見えているのだろう。

​世界遺産に登録されたところで、人の生活までは変わらないのではないだろうか。

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